溶接の知識|溶接の品質とトラブル【求められる品質・表面欠陥・内部欠陥】

2020年06月28日 12:38

溶接の品質とトラブル


ISO9000の初版(1987年版)では、溶接は「特殊工程」と定義されていました。

それは、当時、品質条件を検証することが困難だったためです。

その後、溶接の品質は、「使用する材料や設備・作業者の資格」、「作業条件・作業手順とその管理・検査方法」、さらに安全対策といった「作業標準」と、それを実現する溶接条件や測定器、チェックマニュアルと記録によって管理されるようになりました。

溶接の品質を審査することは、大変重要ですが、それを見極めることは、容易ではありませんでした。溶接作業者や設備に、さまざまな資格や条件が厳密に決められていることは、その証拠ともいえます。

実際に船舶や橋梁、インフラ設備などの重大事故の原因として、溶接不良が指摘されたケースも多く、たえずシビアな品質管理が要求されています。

現代では、センサや高精度カメラ、レーザー変位計といったテクノロジーの発達により、管理・検査技術は高度化の一途にあります。

溶接の未来は、経験や知識に加え、テクノロジーを活用することで、いかに高精度な品質管理を合理的に行うかが鍵となります。

溶接に求められる品質


溶接の品質を審査することは大変重要で、たえずシビアな品質管理が要求されています。
ここでは、溶接に求められる品質について解説します。

溶接における品質


「溶接された製品」に求められる品質の一般的な条件として、下記が挙げられます。

・設計寸法どおり、正確に仕上げられている。
・求められている機能や強度(または安全性)が得られている。
・溶接部の外観が、求められるレベルに仕上がっている。


このような高品質な製品を実現するための「溶接品質」の基本的な条件として、下記の項目が挙げられます。

・ビードに亀裂や穴などがない。
・ビードの波形や幅、高さなどが均一である。
・仕上がりに歪みがほとんど見られず、設計寸法のとおりである。
・求められる強度に適合した溶接である。
 (母材どうしを完全に一体化させている「完全溶け込みの溶接」、または「部分溶け込み溶接」を含む「溶接継手」などを使い分けて必要な剛性を得ている。)

溶接継手と品質


一部の特殊な母材を除き、「溶接継手の強度は母材と同じとみなす」とされています。

溶接継手には、母材の接合方法によってさまざまな種類があり、溶接の強度は母材どうしのどの部分をどう溶接するかによって異なります。

このため、効率よく高い品質の溶接を行うには、溶接後の製品に加わる力の向きも考慮する必要があります。

また、溶接継手の溶け込みは、溶接の強度や品質・作業の能率にとって重要で、母材の形状や必要とする強度に応じた使い分けが必要です。

溶接継手は、溶接部の形状によって図のように分類されます。

※ この分類は一例です。分類にはさまざまな手法があり、必ずしも上の表のとおりとは限りません。

開先(グルーブ)溶接

部材に開先(グルーブ:groove)と呼ばれる溝を設けて溶接します。
母材を完全に溶かし込む「完全溶け込み溶接」と部分的に溶かす「部分溶け込み溶接」があります。

すみ肉溶接

「T継手」や「十字継手」、「かど(角)継手」など、ほぼ直交する2つの母材の面をつなぐ三角形状の溶接があります。

プラグ(せん=栓)溶接

重ね合わせた部材の片側に穴を設ける継手溶接です。

スロット(溝)溶接

プラグ溶接での穴の代わりに、楕円状など細長い溝を設ける継手溶接です。


「開先溶接」や「すみ肉溶接」が一般的な溶接継手で、「プラグ溶接」や「スロット溶接」は特殊であるといわれています。

「突合せ溶接」は、2つの母材がほとんど同一面に位置する継手を溶接することを指しますが、同一面に位置しない「T継手」や「かど継手」でも完全溶け込み溶接である場合は、「突き合わせ溶接」と呼ばれることがあります。

継手効率と強度品質


溶接継手の強度品質は、工法に加え、材料の強度による「継手効率」とも密接に関係します。

継手効率と溶接継手の強度・母材の強度の関係は、以下の式で表せます。

「継手効率」=溶接継手の強度÷母材の強度


例えば、構造用鋼の「突合せ継手」では、溶接金属と熱影響部の強度は母材よりも高くなります。

そして、継手に対して直角方向に荷重が作用すると、母材に破断が生じる可能性が高くなります。

これは、継手の延性と強度が母材の強度と同じかそれ以上であるためで、継手効率は100%以上と考えることができます。


また、高張力鋼(ハイテン)やアルミ合金の大入熱溶接、加工硬化したオーステナイト系ステンレス鋼、熱処理アルミ合金の溶接では、溶接時に熱の影響を受けた部分が軟化します。

そして、溶接金属の強度が母材に比べて低い場合は、継手が破断します。

この場合の継手効率は80~70%、またはそれ以下と考えられます。

溶接欠陥と強度品質


溶接の欠陥や品質を高めるために、溶接設計の段階で用途に適した素材・工法を採用することは重要です。

しかし、適切に設計されていても、溶接の工程で欠陥が発生すると品質に大きな影響を与えます。

例えば、ビードの欠陥は、外観だけではなく強度にも大きく影響します。

つまり、ピットやアンダーカットやオーバーラップ、余盛り不足、割れ(表面)、ビード蛇行、開先残存、アークストライクといった外観欠陥は、溶接品質の欠陥そのものを表しているといえます。

そのため、ビードの外観に関する管理許容誤差や限界許容誤差は「溶接部外観検査基準(JASS 6-20011)」において詳細に定義されています。


ここでは、品質に大きく関わる溶接欠陥の例や、品質維持に欠かせない検査方法、そしてテクノロジーを駆使し合理化を実現した最新の検査事例についても解説します。

溶接品質を損なう表面欠陥


溶接工程は、適切な溶接設計に基づき、図面通りに接合することが原則となりますが、溶接部の外観や強度といった「溶接品質」を担保することが必須となります。

ここでは、溶接品質を損なう代表的な表面欠陥をご紹介します。

なお、「溶接部外観検査基準(JASS 6-20011)」では、それぞれの表面欠陥に対する管理許容差や限界許容差が詳細に定義されており、欠陥に該当するか否かの判断には精度の高い検査が求められます。

ピット


溶接金属内部に発生したガス孔が、ビード表面に放出されたときに穴となって固まった表面欠陥を「ピット(開口欠陥)」と呼びます。

一方、ビード内部のガス孔は、「ブローホール」と呼ばれる内部欠陥です。

ともに発生原因として、シールドガスの不良や脱酸材の不足、母材開先面の油分や錆、メッキなどの表面付着材、材料中の水分などが挙げられます。

A. ピット
B. ブローホール

アンダーカット


アンダーカットは「母材または既溶接の上に溶接して生じた止端の溝」とJISで定義されています。

一般的に溶接電流や溶接速度が過剰に高いことが発生原因となります。

また、ウィービングの幅が大きすぎても、アンダーカット発生の原因になるため注意を要します。

A. アンダーカット

オーバーラップ


母材表面にあふれ出た溶融金属が、母材を溶融しないまま冷えると発生します。

一般的に、溶接速度が低いため、溶着金属量が過剰になり発生します。また、すみ肉溶接で発生する場合は、過剰な溶融金属が重力で垂れ下がり発生します。

溶接条件の見直し(溶接速度を高くする、溶接電流を減らすなど)による対策が必要です。

A. オーバーラップ

余盛り不足


余盛りとは、「開先又はすみ肉溶接で必要寸法以上に表面から盛り上がった溶着金属」とJISで定義されています。

A. 余盛り不足

割れ(表面)


溶接直後の高温状態で溶接部に発生するひび割れのことです。

「凝固割れ」「液化割れ」に大別され、凝固割れは凝固時に発生する割れで、液化割れは多層溶接時に前の溶接層が次の溶接により溶けて発生する割れです。

また、発生位置や形状によって、「縦割れ」「止端割れ」「横割れ」「クレーター割れ」などに分類されます。

A. 縦割れ
B. 止端割れ
C. 横割れ
D. クレーター割れ

アークストライク


「母材の上に瞬間的にアークを飛ばし、直ちに切ること。またはそれによって起こる欠陥」とJISで定義されています。

つまりアーク溶接において、アークの発生不良の跡がその後の溶接で溶かされず、母材に残ったものです。

アークストライクは、母材の割れの原因となる危険性があります。

また、大粒のスパッタが付着し跡が残った場合にも、同様の欠陥が発生することがあります。

ビード蛇行(ビード曲がり、ビードずれ)


ビードが蛇行することで、溶接線からずれてしまう欠陥です。

原因としては、自動供給する溶接ワイヤの曲がりや線ぐせの矯正不良、溶接線と線ぐせの方向が直交しているケースが考えられます。

また、ワイヤ供給速度と溶接電流の設定値が対応していない場合にも発生することがあります。

開先残存


開先の始点から終点まで、連続したビードが形成できていないために、溶接されていない開先が残っている状態です。

ロボット溶接で、始点や終点付近にこの欠陥が発生している場合は、ロボットの制御に問題があることが考えられます。

また、アークやガス・ワイヤ供給などが不安定な場合は、ビードの中間地点でも開先残存が発生してしまうことがあります。

溶接品質を損なう内部欠陥


溶融金属による接合では、溶接特有の現象により、溶接部の内部に欠陥が生じることがあります。

これらの欠陥も、外観品質と同様に溶接強度・溶接品質に影響します。

ここでは、溶接強度・溶接品質を損う代表的な内部欠陥を挙げます。

ブローホール


溶融金属が固まる前に、放出できなかったガスが集まり、球状となってビード内部に残留したガス孔が発生する欠陥です。

このガス孔が、ビード表面で穴になって固まった場合は、「ピット(開口欠陥)」と呼ばれる表面欠陥になります。

A. ブローホール

不純化合物


溶融金属の中に取り込まれたガスの原子が、母材の原子と結合することで不純化合物になり、ビード内部に残る欠陥です。

A. 不純物化合物

スラグ巻き込み


溶接中に生成されるスラグが、溶融金属よりも先に凝固することで、溶融金属内にスラグが残る欠陥です。

A. スラグ巻き込み

溶け込み不足


溶融金属への入熱不足などによって、目的の位置や深さまで溶け込まない欠陥です。

A. 溶け込み不足

融合不良


溶融金属への入熱不足などによって、先に溶け込ませようとした奥の層のビード(前層ビード)を溶融しきれないことで発生する欠陥です。

A. 融合不良

割れ(内部)


溶接部に発生するひび割れのことです。内部欠陥に属する代表的な「割れ」には、 「溶接金属割れ(ルート割れ)」と「熱影響部割れ(ビード下割れ)」があります。

「溶接金属割れ」は、溶融金属内部に発生する欠陥です。

また、 「熱影響部割れ」は、溶接部が急速に冷却されたことよって母材がもろくなり、すでに凝固した部分の収縮力で発生する欠陥です。


A. ルート割れ
B. ビード下割れ

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