溶接の知識|アーク溶接【TIG・MAG・MIG・被覆アーク・プラズマ・EGW】

2020年06月28日 10:14

アーク溶接


さまざまな産業分野で幅広く用いられている溶接(融接)法が「アーク溶接」です。

アーク溶接は、数ある溶接法の中で最も多くの種類の母材に対応し、手作業による溶接からロボットによる自動溶接まで、幅広い工程に対応できる溶接の中心的技術といえます。

ここでは、アーク溶接を代表する「ティグ(TIG)溶接」や「マグ(MAG)溶接」・「ミグ(MIG)溶接」はもちろん、プラズマアークやエレクトロガスアークを熱源にした溶接まで詳しく解説します。

アーク溶接の種類と原理


非消耗電極式と消耗電極式に大別される「アーク溶接」の種類やアークの発生、溶着原理についてご紹介します。

アーク溶接の種類


「融接」のなかでも「アーク溶接」は、さまざまな産業分野で幅広く用いられている溶接法です。

特徴や装置の機構、使用するガスなどによって細分化していますが、「ティグ溶接」「ミグ溶接」「マグ溶接」などシールドガスによって溶接部を大気から保護するガスシールドアーク溶接は、自動化にも適していることから、広範囲で用いられています。

ガスシールドアーク溶接を含む「アーク溶接」は、溶接棒(またはワイヤ)が溶ける「消耗電極式(溶極式)」と、溶けない「非消耗電極式(非溶極式)」の2種類に大別できます。

アーク溶接

※この分類は一例です。分類にはさまざまな手法があり、必ずしも上の表のとおりとは限りません。

アーク溶接のメカニズム


アーク溶接では、「アーク放電」という電気的現象を利用します。

アーク放電とは、気体の放電現象の一種で、空気中に発生する電流のことです。

空間的に離れた2つの電極に電圧をかけていくと、やがて空気の絶縁が破壊されて2つの電極の間に電流が発生し、同時に強い光と高い熱を発生します。

このとき発生する弧(Arc)状の光を「アーク」といい、アークの熱を熱源として利用する溶接方法が「アーク溶接」です。

アーク溶接では、電極(溶接棒またはワイヤ)にプラス、母材にマイナスの電圧をかけます。

すると、母材から電極へのアークが発生します。

アークの出力電流は約5A~1,000A、出力電圧は8~40V程度。アークの温度は約5,000°C~20,000°C。鉄の融解温度は約1,500°C。

母材と電極は、高温になり溶け込んで接合されます。

ティグ(TIG)溶接


「ティグ(TIG)溶接」のシールドガスやパルスの有無、溶接機の特徴などを紹介。
出力電流波形や溶接ワイヤの有無などによる分類についても説明します。


「ティグ(Tungsten Inert Gas)溶接」は、「不活性ガス溶接」を意味します。

火花を飛び散らさずに、ステンレスやアルミ、鉄など、さまざまな金属の溶接に対応するアーク溶接の一種です。

放電用電極に消耗しないタングステン、シールドガスにはアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性(Inert)ガスを使用します。

不活性ガスの中でアークを発生させ、アーク熱により母材を溶かして溶接します。溶加材を用いますが、溶接箇所は不活性ガスで覆われており、アークも安定していることから、スパッタはほとんど発生しません。

ティグ溶接の半自動機は、

・溶接電源
・溶接トーチ
・ガスボンベ、ガス流量調整器

などで構成されており、さらにトーチが水冷式の場合や溶加材がワイヤの場合は、それぞれに必要な機器が付加されます。
また、母材によって電流の極性(プラス/マイナス)を選択する必要があるため、溶接電源には母材に応じた極性が選択できる装置が必要です。

ティグ溶接には交流/直流による分類、パルスの有無、溶接ワイヤの有無など、さまざまな種類があります。

交流/直流は、母材の種類によって選択します。

パルスの有無が選択でき、パルスを使う溶接を「パルスティグ溶接法」といいます。

パルスティグ溶接法は、溶接電流を一定の周期でパルス電流とベース電流に変化させます。

パルス電流が流れている間に母材を溶かし、ベース電流が流れているときには冷却させます。

溶融スポットが周期的にできるため、数珠でつながったようなビードができあがります。

また、ワイヤを使う場合は「コールドワイヤ法」と「ホットワイヤ法」に分けられます。

コールドワイヤ法は、通常の溶加材を使う方法です。一方ホットワイヤ法は、あらかじめワイヤに電流を流し、ワイヤを加熱しているため、時間に対する溶着量を増やすことができます。

コールドワイヤ法に比べて約3倍の溶加材を溶着することができるため、短時間での溶接を可能とします。

高品質な溶接ができる半面、溶着に必要な溶加材の量を得るために時間を要するティグ溶接の短所を補う溶接法といえます。

出力電流波形による分類

溶接ワイヤの有無による分類

※ この分類は一例です。分類にはさまざまな手法があり、必ずしも上の表のとおりとは限りません。

マグ(MAG)溶接


「マグ(MAG)溶接」の適用分野、シールドガスや溶接ワイヤの種類、溶接機の特徴などを紹介。
シールドガスによる分類についても説明します。


「マグ(Metal Active Gas)溶接」とは、活性ガス(炭酸ガス、またはアルゴンと炭酸ガスの混合ガス)を使用するアーク溶接の一種で、「炭酸ガスアーク溶接」または「CO2溶接」とも呼ばれています。

一般的に、鉄系材料の半自動・自動溶接に用いられますが、炭酸ガスが化学反応を起こすため、アルミニウムなどの非鉄金属の溶接には適していません。

半自動または自動で行われるマグ溶接は、被覆アーク溶接(人の手作業によるアーク溶接)における溶接棒の代わりに、針金状の溶接ワイヤを電極として使用します。

ワイヤはコイル状に巻かれてワイヤ送給装置に取り付けられており、電動モータで駆動する送給ローラで自動的にトーチの先端部まで送給されます。

ワイヤへの通電は、ワイヤを支えるコンタクトチップの通過時に行われます。

ワイヤと母材との間に発生させたアークで、ワイヤと母材を同時に溶かしながら溶接します。

このとき、アークや溶融地の周辺を大気からシールドするシールドガスは、ノズルで溶接部周辺に供給されます。

シールドガスには、炭酸ガス、アルゴンと炭酸ガスの混合ガス、またはアルゴンに酸素を数パーセント混ぜた混合ガスを使用します。

被覆アーク溶接に比べ、溶着金属になる電極の溶着速度が速く、「母材の溶け込みが深いので作業効率が良い」というメリットがあります。

また、「溶接金属が良質である」、「溶接トーチをロボットなどに搭載し自動溶接ができる」なども大きなメリットといえます。

マグ溶接の半自動機は、

・溶接電源
・ワイヤ送給装置
・溶接トーチ
・ガスボンベ

で構成されています。
ワイヤは、送給装置から一定の速度で送給される必要があります。
そのため、通常、溶接電源には定電圧特性電源を使用します。
また、ワイヤ送給装置には定速送給方式が採用されています。

マグ溶接にはシールドガスによる分類、溶接ワイヤの種類などの分類があります。

溶接ワイヤですが、「ソリッドワイヤ」は断面同様のワイヤで、炭素鋼用のワイヤでは、耐錆性と通電性を良くするために、表面に銅のメッキが施されています。

また、銅メッキされていないメッキレスワイヤもあり、メッキレスワイヤは「安定したアークが得られる」、「溶接トーチ内部のメンテナンスがしやすい」というメリットがあります。

「フラックス入りワイヤ」は、ワイヤ内部にフラックスが含まれています。

「安定したアークが得られる」、「スパッタが少ない」、「溶接ビードの外観が良い」などのメリットがあります。

その他、「スラグ系ワイヤ」は溶着速度の速さが、「メタル系ワイヤ」はスラグの発生量の少なさが特徴です。

ミグ(MIG)溶接


「ミグ(MIG)溶接」の種類やマグ溶接との違い、溶接機や溶接法の特徴を紹介。
自動車や二輪車製造で用いられる「低周波重畳パルス溶接法」についても説明します。


「ミグ(Metal Inert Gas)溶接」はアーク溶接の一種で、ティグ溶接と同様にシールドガスに不活性ガスを用いますが、ミグ溶接の場合、放電電極が溶ける消耗電極式の溶接法です。

ステンレスやアルミ合金の接合が一般的な用途ですが、溶接する素材によってシールドガスを使い分けます。

電極には、針金状の溶接ワイヤを使用します。

ワイヤはコイル状に巻かれてワイヤ送給装置に取り付けられており、電動モータで駆動する送給ローラで自動的にトーチの先端部まで送給されます。

ワイヤへの通電は、コンタクトチップ通過時に行われます。

ワイヤと母材との間に発生させたアークで、ワイヤと母材を同時に溶かしながら溶接します。

このとき、アークや溶融地の周辺を大気からシールドするシールドガスは、ノズルで溶接部周辺に供給されます。

ミグ溶接の半自動機は、

・溶接電源
・ワイヤ送給装置
・溶接トーチ
・ガスボンベ

で構成されています。
マグ溶接機とほとんど同じ構成ですが、マグ溶接機に比べ、ワイヤ送給装置に改良がくわえられています。
ミグ溶接はアルミニウムの溶接に利用されることが多いため、ワイヤ送給装置には、柔らかいアルミニウムワイヤを安定して送給できるような工夫(4ロール方式)が加えられています。

ミグ溶接は、交流/直流による分類、またパルスの有無によっても分類されます。


ミグ溶接の分類

「ショートアークミグ溶接法」は、短絡移行(ショートアーク)現象による溶接法です。

半自動で溶接することが多く、この場合母材への入熱が少ないため、薄板が対象材になります。

マグ溶接によるショートアーク溶接は、難姿勢での中厚板材の溶接によく用いられますが、ミグ溶接で中厚板を溶接する場合はパルスミグ溶接法がよく用いられます。

「スプレーミグ溶接法」は、溶接電流を臨界電流以上に設定し、アーク電圧を高めに設定して溶接します。

溶けた溶加材が霧状になる「スプレー移行現象」を活用して接合するミグ溶接法です。

アルミニウムを溶接する場合、スパッタを発生しない状態で溶接すると融合不良などの溶接欠陥が発生する場合があります。

この場合、アーク電圧を少し下げ、微小なスプレー移行状態で溶接します。

ただし、薄板から中厚板まで溶接できる「パルスミグ溶接法」が一般化して以来、スプレーミグ溶接法はあまり用いられなくなりました。

「大電流ミグ溶接法」は、太径(直径約3.2mm~5.6mm)の溶接ワイヤを使って溶接します。

溶接装置には、2重シールドガスノズルを備えた溶接トーチと、定格出力電流が約1,000Aの定電流特性電源を用います。

「直流」で「パルス有」のミグ溶接法は、「コンベンショナルパルスミグ溶接法」とも呼ばれています。

基本原理はパルスマグ溶接法と同じです。

アークを維持するための小さなベース電流と臨界電流以上のパルス電流を交互に流すことによって、平均電流が臨界電流を下回る場合においても、ワイヤからの溶滴移行がスプレー化できるようにした溶接法です。

薄板から厚板まで効率よくかつ高品位で溶接できます。

「低周波重畳パルス溶接法」は、アルミニウムの高付加価値な溶接を目的に、パルスミグ溶接法を基として開発された溶接法です。

うろこ状の美しいビードが得られるため、自動車や二輪車の薄いアルミニウム板を溶接する場合に用いられます。

被覆アーク溶接


「手溶接」ともいわれる「被覆アーク溶接」。
安価な設備で手軽にできる溶接法の特徴と原理をご紹介します。


被覆アーク溶接は、消耗電極式(溶極式)アーク溶接法の一種で、母材と同材質の金属棒(被覆アーク溶接棒)を電極とし、この心線と母材との間に形成されるアークを熱源とする溶接法です。

心線の被覆から生成されるガスやガラス状のスラグで溶けている金属を覆って溶接するため、ガスやスラグによるシールドに加え溶接棒先端の被覆筒の形成などにより現場溶接での風などの影響を受けにくいというメリットがあります。

古くから用いられ、原理的に手で行う溶接法であることから「手溶接」と呼ばれることもあります。

炭酸ガスによるマグ溶接の半自動・自動機の普及により適用ケースは減少していますが、比較的安価な設備で、室内外問わず手軽に行えるといった利点を活かした場面で用いられます。

プラズマ溶接


プラズマアークを使う「プラズマ溶接」。
パイロットガスによるプラズマアークの発生原理や溶接の特徴、ティグ溶接との違いを紹介します。


プラズマ溶接は、電極と母材との間に発生させるプラズマアークを利用して行う溶接法です。

非消耗電極式に分類され、ティグ溶接と同様、電極にタングステン棒を使いますが、特徴は電極を包むノズルとプラズマガスによってアークが広がらないよう絞られている点です。

熱集中性が良いためビード幅が狭く高速で、歪の少ない溶接が可能です。

アークの指向性が高いため、すみ肉溶接に適しており、スパッタも発生しません。

電極消耗が少ないため、長時間高品質の溶接が可能です。

溶接機自体はティグ溶接機に比べ高価ですが、ランニングコストは安価です。自動溶接にも最適な溶接法の1つです。

トーチ内を流れるパイロットガス(不活性ガス)はパイロットアーク熱によってイオン化(プラズマと言う)します。

イオン化したパイロットガスは、プラズマジェットとなってノズル孔から噴出し、アーク電流の導電体となります。

これにより、アークは絞られてエネルギー密度の高いアークとなって、インサートチップ孔から噴出します。

アークの広がりはティグ溶接のアークに比べて約4分の1程度となっており、電流密度が高められたアークを得ることができます。

エレクトロガスアーク(EGW)溶接


船の側外板や架橋や貯槽タンク、圧力容器といった立向突合せ継手に適用される「エレクトロガスアーク(EGW)溶接」。
そのシールドガスや溶接ワイヤ、溶接機などの特徴を紹介。


エレクトロガスアーク(EGW)溶接は、厚板を立向姿勢で高能率かつ安定した溶込みによって溶接するために開発された、消耗電極式の溶接法です。

1960年代当初は厚板への対応から、造船や建造物の鉄骨、架橋など主に大型の造形物に適用されてきましたが、その後、装置の改良により薄板への対応や狭開先化で用途が広がりました。

EGWは、シールドガスには炭酸ガスを用いることが多いのですが、アルゴンのみを用いたりアルゴンに炭酸ガスまたは酸素を混合したガスや、アルゴンにヘリウムを混合したガスも用いられます。

溶接ワイヤにはスラグを形成して優れたビード外観が得られるフラックス入りワイヤを使う場合が多いですが、ソリッドワイヤが用いられる場合もあります。

溶接電源には、直流定電圧特性電源または直流定電流(垂下)特性電源が用いられます。

溶融池を母材端と銅当て金や耐火性裏当て材などで囲み、溶融金属の垂れ落ちを防止しつつ立向上進溶接をするため、厚板を1パス(1回の操作)で溶接することができます。

大電流を使用するため溶着速度が高く、高能率な溶接ができ、また、角変形が小さく開先精度に対する裕度が比較的大きいといったメリットがあります。

用途としては、船の側外板や架橋から、貯槽タンク、圧力容器といった立向突合せ継手の溶接に適用されています。

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